雇用保険では、退職したときの年齢が65才未満の人は、退職した理由によって失業手当を受けられる日数が変わってくるのですが、自己都合や定年退職で退職した人は「一般の離職者」と呼ばれ、雇用保険の加入期間だけで、失業手当の給付日数が決まります。
一方で、会社のリストラや倒産でやむなく退職した人を雇用保険法上では「特定受給資格者」と呼んでいます。この特定受給資格者は雇用保険の加入期間と退職したときの年齢が考慮され、一般の離職者より、失業等手当の給付日数が手厚くされていることが特徴といえるでしょう。
雇用保険の加入期間が5年未満ではほとんど差がありませんが、5年以上になると差が歴然と出てきますのでご注意下さい。
<会社都合による退職のケース>
- | 雇用保険加入期間(=被保険者期間) |
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退職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | - |
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- | 5年未満 | 10年未満 | 20年未満 | 20年以上 |
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30 才 未 満 | 90日 | -90日 | 120日 | 180日 | − |
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30才以上35才未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
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35才以上45才未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
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45才以上60才未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
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60才以上65才未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
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<自己都合による退職のケース>
- | 雇用保険加入期間(=被保険者期間) |
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退職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | - |
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- | 5年未満 | 10年未満 | 20年未満 | 20年以上 |
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年齢に関係なし | 90日 | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
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また、ハローワークにおいて特定受給資格者と認められる人は「倒産により離職した人」と「解雇などにより離職した人」を言いますが、御社の従業員の場合は前述の「解雇などにより退職した人」として受給を受けることとなりますので、離職票作成の際にはきちんとその理由を明記してください。尚、以下に倒産と解雇の離職者について書き出してみましたので、参考までにご覧下さい。
<倒産などにより退職した人>
1.倒産によって退職した人。倒産とは、事業所の倒産、民事再生、会社更生などの倒産手続きの申し立てや、手形取引の中止をいいます。
2.事業所の従業員の雇用状況が大きく変わった場合(1カ月間に30人以上の退職予定者がいる)の届出がされ退職した人。
あるいは、その事業所の従業員の内、雇用保険に加入している1/3を超える人が退職したため、やむなく退職した人。
3.事業所の廃止や縮小によって退職した人。
4.事業所が移転したために、現在住んでいるところからの通勤が困難になり退職した人。
<解雇などにより退職した人>
1.リストラによって退職した人。ただし、本人の重大な過失で事業所に大きな不利益をもたらしてリストラされた人は除きます。
2.入社時に提示された雇用条件と実際の雇用条件がはなはだしく違っていたため退職した人。
3.給料の1/3を超える額が連続して2カ月以上支払われなかったため退職した人。
4.給料が85%未満に下がったために退職した人。ただし、そのことが想定できなかった場合に限られます。
5.退職前3カ月間で各月45時間を超える時間外労働があり退職した人。
6.生命や身体に関わる法律違反について、行政から指摘されていたのに、事業所がそれを改めなかったために退職した人。
7.事業所が従業員の職種転換のときに、継続して働けるような配慮を行なわなかったために退職した人。つまり、今まで経験のない職種に配置転換になったのに、経験者と同じノルマや技能を要求されたときなど。
8.雇用契約が1年以内の従業員が3年以上雇用され働いているのに、当初の雇用契約を、更新してくれないため退職した人。
9.上司や同僚からセクハラを受けたり、酷い冷遇、嫌がらせを受けて退職した人。
10.事業主から直接又は間接的に、退職をせまられ退職した人。ただし、早期退職優遇制度を利用して退職した人は除きます。
11.事業所が法律違反などにより、3カ月以上休業になり退職した人。
12.事業所の業務が法律に違反しているため退職した人。
また、平成21年の法改正で雇い止めとなった非正規労働者に対するセーフティーネットが強化され、一般の離職者と区別されるようになりました。平成21年3月31日より後に期間の定めのある労働契約が更新されず、本人が契約更新を希望したものの、契約更新がなされなかった人が離職した場合、<特定理由離職者>となります。
今後、事業主は期間雇用の退職社員が出た際は、本人に延長の意思があるかどうかを確認する必要性が出てきますのでご注意下さい。
なお、特定理由離職者に関しては被保険者期間が通常の12ヶ月の半分の期間、つまり6ヶ月以上あれば受給ができ、また失業等手当の給付日数が手厚くなる場合があります。さらに詳細を知りたい企業様はご相談ください。